なにはさておき量子論 第8章 量子論的な力

【なにはさておき量子論 第8章 量子論的な力】

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1.原子間力

唐突かもしれないが、水素分子を考えてみよう。

水素分子とはなにか? それは分子記号($H_2$)で表される。多分誰でも知っている。水素原子がふたつくっついたものである。しかし、これに疑問を持った人はいないだろうか?
図12
図12を見てもらいたい。これは古典物理での水素分子モデルである。原子核の周りを回転している電子2個には、電磁気力いわゆるクーロン力が働く。クーロン力は、同じ電荷では斥力だから、当然電子間にも斥け合う力が働くので、この古典モデルでは、水素原子ふたつが水素分子を構成することができない。 これを不思議に思わなかったか、ということだ。

水素原子2個が水素分子を作ることは、ニュートン力学やマックスウェル電磁気学をどのように駆使しても説明不可能なのである。

図13
そこで、図13を見てもらいたい。この読み物で量子論を知った人なら理解できる。実際の原子とは原子核の周りを電子の粒が回っているのではない。雲のように存在している。(厳密に言うと、観測するまでは存在すらしていない。絶対値を2乗すると、存在確率になるところの波動関数という波である。)
これをくっつけて並べてみたのが図13なのであるが、これをいくらにらんでいても、やはり分子はできそうもない。やはりクーロン力のために分子は離れてばらばらになるだろう。
図14
そこで図14である。水素原子がある一定値より近づくと、ふたつの電子はもはや区別できなくなってしまうのである。つまり(電子a)が原子核Aの周りにいて、(電子b)が原子核Bの周りにいる、と単純に言えなくなるのである。というよりも、電子2個は、(電子a)、(電子b)と区別できなくなる。つまりどちらの電子も原子核AとBの周りに存在する(これを混成軌道という場合がある)。

要するに、原子核AとBは、2個の電子を共有するために結果的に2原子間には引力が働く。これを共有結合という。おお、なんと見事な説明であろうか。

えっ、$H_2$は、わかったよ、だけど何で$H_3$や$H_4$がないのかって?

うーむ、鋭すぎる質問である。これを説明するためには、ちょっと長い話が必要だ。


一言いいたい!





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W.パウリ


2.パウリの排他律

ここに一人の物理学者がいる。名前を”パウリ”という。
実はこの読み物でも初登場ではない。第2章の5項「若き物理学者はコペンハーゲンを目指す」で名前が出ている。ボーアのさそいでハイゼンベルクと共にコペンハーゲンへ参集した若き物理学者のひとりである。

もちろん理論物理学者である。なぜこれを強調するかというと、実験物理が全くダメだったらしいからだ。「実験べた」というレベルではなかったらしく、「パウリがそばに来たら実験が失敗する」とかパウリ効果で彼が触れた実験器具が壊れた」とまで言われたそうな。

ところが彼は「理論物理学の良心」とも呼ばれ、曖昧さを許さないその姿勢から厳格な批判者でもあった。時には他人を挫折させるほど批判は辛辣であったという。容貌からもなんとなくそれはうかがえるように思う。
こんなエピソードがある。日本の湯川とは全く独自に中間子論を思いついたシュティケルベルクという学生がいたそうだ。しかし彼はは、先生であるパウリに、「いくらつじつまが合うからといって、勝手な粒子を仮定するものじゃない。」と、論文が却下されてしまったということだ。(却下されなければシュティケルベルクは、ノーベル賞だったかも)

パウリもノーベル賞を受賞しているが、その時の功績は『パウリの排他律』として知られている。
もしもこの宇宙に『パウリの排他律』がなかったら、原子分子の世界は非常に混乱を極め、もしかすると一個の原子は原子核電子の団子になっていたかもしれない。

この項では、その『パウリの排他律』を説明してみよう。前項で書いた$H_3$や$H_4$ができない理由に繋がる。

一気に結論を書いてしまうと、『パウリの排他律』とは、「ひとつの電子軌道には全く同じ量子状態の電子は一個しか入れない」という原理のことである。

まず、「量子状態」という言葉が意味不明である。そのはずである。
量子力学では、古典力学と異なり「状態」は様々な「状態」の重ね合わせである、ということを思いだしてもらいたい。
例えば「電子の位置」という「状態」を考えると、古典力学では、ある時刻の電子の位置は一個の状態しか持たない。ところが量子力学では、ある時刻の電子は、AにもBにもCにもDにも・・・、存在するのである。思いだして来たかな、そうこれが波動関数であった。つまり、「量子状態」とは、状態の重ね合わせとしての「波動関数」である、と理解してもらいたい。

従って『パウリの排他律』とは、
ひとつの電子軌道には同一の波動関数を持った電子は一個しか入れない
ということである。

少し話が専門的になるが、一応書いておく。
実は電子の場合、量子状態というのは4個の量子数(主量子数、方位量子数、磁気量子数、スピン量子数)から決定される。(それぞれの量子数が何を意味するかは述べない。)
で、電子が原子核のどこに存在するかは、最初の3つ(主量子数、方位量子数、磁気量子数)で決まってしまうのである。だからこの3つが全く同じものは、スピン量子数が違っていないと、同一軌道に入れない。これが『パウリの排他律』の結論である。

ここでスピン量子数とは何か、それは「電子の自転方向だ」と、とりあえず言っておく。これは、「右回り」と「左回り」の二種類しかない。

よって『パウリの排他律』によれば、
同一電子軌道には、「右回りスピン」電子と「左回りスピン」電子の二個が存在できる
ということになる。

水素原子という単純な原子では電子軌道は一個しかなく、その軌道に一個の電子が入って水素原子はできあがっている。しかし、今述べたように、この軌道にはスピンの異なるもう一個の電子が入ることができるので、エネルギー的には安定ではない。そこで、もうひとつの水素原子と軌道を共有して、そこに二個の電子を入れて安定になろうとする。この結果できあがるのが水素分子($H_2$)である。これはとりもなおさず、$H_3$や$H_4$が存在できない理由でもある。ひとつの軌道に電子が二個しか入れないからだ。

これに対して、ヘリウム($He$)では、一個の軌道を二個の電子が埋めているので原子として安定なのである。元素の周期律表(メンデレーエフが作った)で一番右の列にある元素は、このように埋まるべき軌道がきちんと埋まっているので、不活性元素(ヘリウム、ネオン、アルゴンなど)と呼ばれるのだ。

水素のように軌道が埋まっていない元素は、他の元素の電子と共有結合のための手をさしのべているとも言える。この手をさしのべる電子を「価電子」という。酸素($O$)はふたつの価電子を持っている。その二本の手に、一本の手を持った水素が結合したものが水分子($H_2O$)である。

パウリの排他律』は、実は電子にだけ適応されるのではない。正確に言うと、「ふたつ以上のフェルミ粒子が全く同一の量子状態をもつことはできない」という表現になる。フェルミ粒子ってなに? これは素粒子論で取り上げることにしよう。


一言いいたい!





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四つの力


3.力の種類

さて、唐突に問いを発する。
この宇宙を成立させている根元的な力とはいったい何だろう?
・そんなこと考えたこともねえなあ。
・多分万有引力じゃないの。
・いや、磁石の力もあるぞ。
・それを言うなら電気だってそうだろう。
・地面の上のサッカーボールを蹴ったら飛んで行く、というのも力だべ。
・台風が街路樹をなぎ倒す、ってのは力じゃないのか。
・作用・反作用という力もあったぞ、ニュートンだよ。
・ニュートンと言えば、力と加速度の関係式もあったよなあ。
・そうそう「$F=ma$」、($m$)は質量、($a$)は加速度、($F$)が力。
こんな解答が返って来そうである。
もし、これ以上の解答を言える人は、絶対それはどこかで習った知識であるはずだ。なぜなら、上記以外の力というのは一般の人には絶対、実感できないからである。

上記に書いた力をまとめて
(1)重力
(2)電磁気力
という。それも万有引力を除けば全て電磁気力である。
そして、万有引力は、「重力」という言葉で表現されるのが普通である。

サッカーボールと台風は何なんだ、という疑問、自然である。

実は、どちらも電磁気力だ。というよりも私たちが自然界で見る力というのは、重力を除けばまず間違いなく電磁気力であると考えてよい。というのは、原子核電子の間に働く力が全て電磁気力であるからだ、と言えば納得してもらえるだろうか。(正確に言えば、原子核と電子の間にも重力は働くが、電磁気力に比べてあまりにも小さく、これはまず考える必要はない。)

思いだしてもらいたい。電子は、原子核の周囲に存在し、その軌道がとびとびであったことを。このとびとびの軌道を電子が行き来するとき、光を出し入れするのであった。この光の出し入れがとりもなおさず電磁気力である。

原子が光のやりとりを行う。その放出する光を他の原子が受け取る、これが力である。つまり電磁気力とは、光が媒介する力である。実はこの考え方はニュートン力学には存在しなかった。力というのは、「何か」が媒介する、という考え方のことである。そしてこの考え方を「近接力」という。これに対して、力を媒介する「もの」を想定せず、力とは瞬時に相手に到達する、という考え方を「遠隔力」と呼ぶ。

実際の観測により、力は「近接力」であり、媒介する「もの」が必要だということが明らかになった。そして電磁気力を媒介するのが光である、ということも明らかになったのである。原子が分子を構成する力も、電子の共有結合イオン結合によるので電磁気力である。となれば、原子・分子レベルで働いている力は電磁気力だけということになる。だから、サッカーボールも台風も、(膨大な)原子・分子の相互作用から起こるので、電磁気力なのである。

であれば、重力も何かが媒介しているのか? と考えるのは自然である。その通り量子論では、重力子(グラビトン)という粒子が存在し、重力を媒介している、と結論した。但し、この重力という力はあまりに小さく、これを媒介する重力子もまだ実験で確認されるに至っていない。

重力が小さいって、そんなばかな! と思う人がいるかもしれないが、私たちが重力を感じることができるのは、相手が地球ほども大きい場合だけなのである。もし重力が桁違いに大きければ、私とあなたの間に働く力も目立つほどに大きくなって、街を歩いて近づく人がいれば注意していないと衝突してしまう、となれば、生活がわやである。


さて、ここから先の話をすると、実は『素粒子論』の領域に入ってしまう。私も、この「なにはさておき量子論」の後に、「わかるまで素粒子論」を書くつもりでいるので、詳細をここで書いてしまうとネタバレになって、まずいのである。しかし、最低限、自然界の4つの力の話だけはしておかねばならない。
4つの力とは、
(1)重力
(2)電磁気力
(3)弱い相互作用
(4)強い相互作用
である。


一言いいたい!





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E.フェルミ      湯川秀樹


4.根元的な4つの力

前項で、自然界には4つの力があると言い、それは
(1)重力
(2)電磁気力
(3)弱い相互作用
(4)強い相互作用
であるとした。そして上のふたつは前項で話もした、なじみの深い力である。

ところが後ろのふたつには「力」という言葉が出てこない。そして「弱い」だの「強い」だの妙に漠然とした響きの言葉である。おそらく専門に物理を学んだ人でなければ知らない力であろうと思われる。

まず、弱い相互作用であるが、これは、ベータ崩壊を起こす力である。
解りにくいよねえ。とりあえず、ベータ崩壊を説明する。

中性子一個を、はだかで単独に取り出しておくと、やがてこれは電子ベータ線)を放出して陽子に変わる。これをベータ崩壊と呼ぶ。(正確には、電子と共にニュートリノも放出しているのだが、詳細は『素粒子論』に譲る)

ベータ崩壊の理論的研究は、”フェルミ”によって行われた。フェルミはイタリア人であり、ボーアのかけ声でコペンハーゲンへ集結した物理学者には入っていない。しかし、ディラックら若手と同年代の学徒であり、量子論から素粒子論へと研究を進め、後にイタリア・ファシズムによって故国を追われ、アメリカに渡ることになる。

ところで、何でベータ崩壊が『力』なんだ、と思った人は正常である。実はベータ崩壊発見当初は、この現象が『核力』いわゆる、原子核内の陽子中性子を結びつけている力ではないかと思われたのである。

原子核の中には、複数の陽子・中性子がある(水素原子は例外、陽子のみ)。中性子が陽子に変わることはフェルミによって確かめられている。また、陽子も電子とニュートリノを吸収すると中性子に変わる。粒子が互いに姿を変え合うとき、そこに力が働くというのが量子論の導き出す結論である(すでに説明した共有結合と同じ理屈である)。つまり、粒子Aと粒子Bが別の何らかの粒子を出し、それをキャッチボールするときA〜B間に力が働くのである。電子と陽子が光子をキャッチボールしているのは既に説明した。

この理由によりベータ崩壊こそが核力の原因だと考えられたのだ。
ところが実際に計算してみると、ベータ崩壊程度では、強い強い核力はとても説明できないことが明らかになった。陽子と陽子という電気的に反発する粒子を極々小さい原子核内に閉じこめておくにはベータ崩壊とは桁違いの大きな力が作用していなければならない。
そこで、考えられたのが、核子がキャッチボールしている『なにか』があるだろうという事で、これは自然な考え方である。核子が強く結びつくためにキャッチボールする粒子は、電子やニュートリノのような軽いボールでは話にならない。計算の結果電子より200倍以上も重い粒子をキャッチボールしなければならない。

この提案をしたのが、”湯川秀樹”であり、キャッチボールする粒子を『中間子(メソン)』という。

余談
実は発表当時、湯川博士の『中間子論』には、多くの批判があった。それは、「新しい粒子を仮定すれば、どんな物理現象でも簡単に説明できてしまうではないか」というものである。
量子論育ての親、ボーアが来日したとき、『中間子論』を熱心に説く湯川博士に対し、「君は、そんなに新しい粒子が好きなのか」と冷ややかに答えた話は有名である。
次の話は都筑卓司先生の著書「10才からの量子論」からの引用である。面白いので紹介する。
『推理小説を書くとき、「絶対に未知の薬物を使ってはならない」という前提があるそうだ。作家が勝手に、ここに特殊な毒薬があり、これを飲むと三日目にころりと死ぬことになる・・・・・などと言い出したら、密室殺人も可能だし、アリバイ崩しもめちゃめちゃになってしまう。』
ここからは、私の意見。シャーロック・ホームズの短編に『悪魔の足』という話があるが、これは上記に違反している。(解らない人は「シャーロック・ホームズ 最後の挨拶」という短編集を読むこと)


閑話休題
ボーアらの批判にもかかわらず、実際に実験物理学者によって宇宙線のなかから中間子は発見された。そしてその質量は湯川博士の予言通り、電子の273倍であった。湯川博士が中間子論を発表してからノーベル賞を受賞するまで実に14年かかっている。これは、実際に中間子が発見されるまでそれだけの時間がかかったからである。

上記のいきさつから、ベータ崩壊という力は、核子を結びつける力に比べて極めて小さいという意味で『弱い相互作用』と呼ばれるようになった。これに対し、湯川博士が主張した中間子のキャッチボールは『核力』と呼ばれたが、一方で『弱い相互作用』に対して『強い相互作用』とも呼ばれることになったのである。

注)「核力」と「強い相互作用」とは、厳密には異なる。詳細は、「わかるまで素粒子論」。


一言いいたい!





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D.メンデレーエフ


5.補足

さて、新しい章に入る前に、この章の補足事項をいくつか話しておこう。

(1)元素の周期律表

パウリの排他律を説明したとき、『実は電子の場合、量子状態というのは4個の量子数(主量子数、方位量子数、磁気量子数、スピン量子数)から決定される。(それぞれの量子数が何を意味するかは述べない。)』ということで話を打ち切ったため、ここで読者のみなさんは何かもやもやとした気持ちになってしまったことだろう。
元素の周期律表(1869年にメンデレーエフが発表)を見たとき、第1周期には、水素・ヘリウムの2元素しかなく、第2・第3周期では、8個の元素、第4・第5周期は18個・・・、と末広がりになっていることに疑問を持った人がいたと思う。
これを簡単に解説しておく。これは量子化学に属する分野の話である。(細かく話し出すと非常に長くなるので、さわりだけ)

電子の量子数は、4つある。それぞれ「主量子数」「方位量子数」「磁気量子数」「スピン量子数」である。最初の3つが、電子のエネルギーと存在位置を決める量であり、最後の「スピン量子数」が右回りと左回りのふたつがあるため、ひとつの軌道にふたつの電子が存在を許される、というのが「パウリの排他律」であった。ここまでは復習である。

さて、電子の軌道には、内側から、K殻・L殻・M殻・・・、と名前がつけられている。この殻の違いは、実は「主量子数」が、異なっており、K殻は主量子数=1、L殻は主量子数=2、M殻は主量子数=3・・・となっている。つまり「主量子数」は、電子のエネルギーを表している。
次に「方位量子数」「磁気量子数」を考える。

K殻では、方位量子数$=0$、磁気量子数$=0$しかない。従ってK殻での電子軌道は一個しかなく、これを「$1s$軌道」という。
L殻では、方位量子数$=0$、$1$、磁気量子数$=1$、$-1$を持つので電子軌道は4つとなる。それぞれ「$2s$軌道」「$2p_x$軌道」「$2p_y$軌道」「$2p_z$軌道」と呼ぶ。($s$が付く軌道は「方位量子数」が$0$で円軌道、$p$が付く軌道は、「方位量子数」が$1$で3方向への団子が繋がった形になる。)
図15
一般には
主量子数$=1$ : 方位量子数$=0$(1通り)
主量子数$=2$ : 方位量子数$=0$、$1$(2通り)
主量子数$=3$ : 方位量子数$=0$、$1$、$2$(3通り)
・・・・・
であり、
方位量子数=0:磁気量子数=0(1通り)
方位量子数=1:磁気量子数=0、1、−1(3通り)
方位量子数=2:磁気量子数=0、1、−1、2、−2(5通り)
・・・・・
なので、以下のことが言える。
主量子数=1(K殻) : 1s軌道のみ(1種類)
主量子数=2(L殻) : 2s軌道と3つの2p軌道(4種類)
主量子数=3(M殻) : 3s軌道と3つの3p軌道、5つの3d軌道(9種類)
・・・・・
となるのである。

これに「スピン量子数」を考慮に入れると、パウリの排他律で、それぞれ2倍になるので、
第  1周期: 2元素
第2・3周期: 8元素
第4・5周期:18元素
・・・・・
が言えることになる。

(2)強い相互作用・弱い相互作用

核力』であるところの『強い相互作用』を媒介する粒子は、『中間子』であるという話をした。ところが、『ベータ崩壊』を発生させる『弱い相互作用』を媒介する粒子の話はしていない。これは片手落ちではないか? その通りである。
しかし、その話をやり出すと、それはすでに量子論を離れて素粒子論の世界に入ってしまう。
また、正確に言うと、『強い相互作用』を媒介する『中間子』も実は素粒子ではない、という話もしなければならず、これも量子論の範疇を外れてしまう。従って、この時点で、その話はしない。なぜなら、私はこの「なにはさておき量子論」のあとに「わかるまで素粒子論」を書こうと思っているからである。

従って、上記の件に関しては予告だけしておく。
『強い相互作用』を媒介している本当の粒子は、「グルーオン(膠着子)」という。
『弱い相互作用』を媒介する粒子を「ウィークボソン」という。
さて次章は、量子論の最終章である。


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